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私のおすすめ書籍~その5~ 推薦:歴史の里マイスターの会 Y.Oさん

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』

(著者:戸部良一他、中公文庫)

 

 

 

 新型コロナウイルスは終息の気配がなく、第2波の襲来も気がかり。本書は為政者・リーダーが読んでほしい書籍の一つです。久しぶりに再読しました。生活者にとっても危機管理の手がかりを教えてくれます。

 

 私が本書(19版)を手にしたのは20年ほど前。中公文庫の初版が発行された1991年から10年後です。原著は1984年に刊行されました。

 

 執筆は軍事史、組織論などの研究者6人の分担。「軍隊は合理的・階層的官僚組織の最も代表的なもの」として、副題にあるようにノモンハン事件(旧ソ連との国境紛争)から沖縄戦まで、本書によれば日本軍の「6つの敗け戦」を分析し、失敗の要因を戦略と組織の次元から検証しています。

 

 興味深いのは、米軍の戦略・組織特性との比較です。戦略について日本軍は「目的が不明確・短期決戦志向」、米軍は「目的が明確・長期決戦志向」、組織について日本軍は「人的ネットワークを基盤とする集団主義が混在」、業績評価は米軍の「結果」に対し日本軍は「動機・プロセス」を重視し、「失敗の蓄積・伝播を行なう組織学習の軽視」などを挙げています。

 

日本軍の組織的特質を戦後、企業が「創造的破壊の形で継承」したものの、半世紀を経て「自己革新組織としての能力を問われている」と文庫本のあとがきでは結んでいます。

 

文庫本の刊行後、わが国では東日本大震災など、大きな危機に直面してきました。今、コロナ。この本の指摘が今もまだ克服されていないのではないか。「想定外」を免罪符にしていてはなりません。

 

歴史の里マイスターの会 Y.O