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私のおすすめ書籍~その6~ 推薦:歴史の里マイスターの会 Y.Oさん

『別冊太陽 日本書紀 編纂1300年』(監修=遠山美都男、平凡社)

『歴史文化ライブラリー 六国史以前 日本書紀への道のり』(関根淳、吉川弘文館)

 今年は『日本書紀』が成立して1300年。8年前の『古事記』成立1300年に比べ、関連書籍の刊行や企画展、講演会などが少ない。イベントはコロナ禍の影響もあろう。「記紀」と並び称されるが、当地ゆかりのヤマトタケルを例にとっても「古事記」が文学性豊かであるのに対し「日本書紀」は地味なのがその理由と思う。

 

 10月発行の『別冊太陽 日本書紀 編纂1300年』の監修者は学習院大学講師の古代史研究者。7章に分け、「日本書紀」の内容を神代から律令体制の確立期まで古代史学者が解説し、「日本書紀」の成立の歴史にも触れている。

 

 大型本のムックなので、伝承関連地の風景や遺跡・出土遺物などの写真が多い。関連年表、地図も。入門概説書だが、監修者が巻頭言で「目からうろこの新見解も満載」と記しているのは〝自画自賛〟ではない。「大臣・大連」のコラムもその一つ。詳細は本書でご一読を。

 

 

 『六国史以前 日本書紀への道のり』は今年7月の発行。著者は高校の先生。「日本書紀」関係の共著をいくつか出している。この本では「記紀」以外の古代の史書と「古事記」の成立事情を論究している。

 「帝紀・旧辞」の論考では、「記紀」を厳密な文献批判により研究し、定説になっている津田左右吉(早大教授、美濃加茂市出身)説の問題点を指摘している。大化以前、考古学でいえば古墳時代史の研究は文献史料が少なく、考古学に圧倒されている感だが、津田の打ち立てた実証的研究は進展しているようだ。

       歴史の里マイスターの会 Y.O