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危急存亡の秋

    志段味で白鳥塚古墳を地元の小学6年生にガイドしていた時のこと。古墳は4世紀前半に造られたと説明し「女王卑弥呼が亡くなり、

50年以上経ったころ」と付け加えたら質問があった。「何故、卑弥呼には『卑怯』の『卑』の文字が使われているのですか」と。

 

    小学6年の社会科で日本史を学ぶことは知っていたが、こちらの知識を試されている気もして、質問にはいささかうろたえた。卑弥呼の名前を知ったのは高校1年の日本史の授業。大学を出立ての先生から、邪馬台国をテーマにした岩波新書『埋もれた金印』を薦められた。当時のベストセラー、古代史に関心を持つきっかけになった書物だ。

 

    日本史は人名や年代を覚えなくてはならないから、嫌いだという子が多いようだ。でも、この国や世界を知るには、歴史を学ぶことが大事。その第一歩は身近な郷土の歩みを知ることだろう。歴史の里・志段味古墳群は格好の教材。古墳や出土遺物を見て、その時代の歴史を体感できる。

 

    卑弥呼の話、いじわる質問かどうかは別にして、地元の小学生が志段味に関心をもつのはうれしい。郷土の文化財を守っていくため、子どもたちに期待したい。

 

    国の針路を決める時がくる。「危急存亡の秋(とき)」―誤りのない選択をするのは、大人の責務である。                

(岡村)