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私のおすすめの書籍 ~その12~  推薦 歴史の里マイスターの会 O崎

 「古墳時代に魅せられて」 

都出比呂志(つでひろし) (大阪大学出版会2018

 

著者(1942年生まれ)が生涯を振り返って書いた本のように、タイトルから推察されますが、必ずしもそれだけではなく、現在でも古墳研究に多くの示唆を与える内容を含んでいます。

 

 まず、文章表現がとても明快です。特に初心者にとってありがたいことです。例えば、「首長系譜」について、なぜこのようなことが言えるかを、全国同時的な首長墓の移動から説明しています。

 

次に、日本の考古学そのもののが国際性に乏しいことを強調しています。近隣諸国との交流も少なく、日本の独自性に正負両面のあることなどを。それは例えば、「発掘技術と自然科学利用は、日本人特有の器用さと豊かな財力を背景に発達している。」とか、「民族のルーツ解明という狭い枠に閉じこもり、グローバルさを欠く。」といった欧米からの視点です。

 

クニのはじまり、の所では「初期国家」と「古代国家」の違いが分かりやすく説明されています。最新の成果と限りませんが、考古学からみて日本がどのようにはじまったかを知る基本的な論説があります。