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「どうする 異常気象」

  「地球沸騰」―9月2日付の朝刊1面トップ記事の見出し。世界各地で相次ぐ森林火災に、国連の事務総長が「地球沸騰の時代が来た」と警鐘を鳴らし、温暖化対策の強化を呼びかけたという。

  「異常気象」が指摘されて久しい。今年ほどそれを実感した時はない。梅雨時に水害が多発し、夏の猛暑とゲリラ豪雨、そして台風の猛威。気象庁によると、今年夏(6~8月)の平均気温は125年間で最高だった。

 

    古代、人々は気候変動にどう対応したか。名古屋大学の中塚武さん(古気候学)の研究によると、古墳時代の「紀元 5、6 世紀は湿潤・寒冷の極」を迎え、洪水が頻発したらしい。原理の説明は省略するが、樹木年輪の主成分であるセルロースの酸素同位体比から計算されたもの。

    中塚説に考古学の発掘成果を重ねてみよう。一宮市の木曽川左岸にある大毛池田遺跡では、古墳時代中期前葉の西暦400年前後、大規模な洪水層が確認されている。考古学者・赤塚次郎さんは、この時期に出現する帆立貝式古墳について「被災した故郷の復興に挑む英雄や仲間たちを英霊として祭り、祭壇場所を創設したもの」という独特な見方をしている。

    岐阜県大垣市の荒尾南遺跡では、中塚説と若干、年代差はあるが、花粉分析により古墳時代の「紀元後600年~750年の寒冷な時期に稲作は衰退し、縄文時代の焼畑農耕へ一時的に回帰、気候変動に適応した可能性」があるという。

 

    考古学者・伊藤秋男さんは、大毛池田遺跡にふれ「弥生・古墳時代の人々は、現代の私たちの生活態度『自然に立ち向かう生活』ではなく『自然に優しく寄り添う生活』。冠水・洪水は、人々にとって災害ではなく『肥沃な土を運ぶ』神の恵みだったのではないか」と述べている。

    古代の人々は気候変動にあきらめたり、抗うのではなく、「人間は自然の一部」と考えていたようだ。自然環境に適応していく生き方には学ぶ点がある。

    とはいえ、温暖化と異常気象への対応は急がなくてはならない。

 (岡村)

 

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