何を囲っている? 囲形(かこいがた)埴輪の謎!

 大阪府藤井寺市の狼塚古墳出土の囲形埴輪をモデルに作りました。施釉と焼成は陶芸をやっている仲間にしてもらいました。釉薬の御深井(おふけ)の水色をまとって、かわいい囲形埴輪になりました。ぬり絵体験で色鉛筆立てに使います。

 

 囲形埴輪の出土状況はきれいで、細長い長方形の埴輪を8個使い、一辺2個ずつ並べて1.2m四方を囲み、中に小さめの川原石を敷き詰めて真ん中辺りに土製品が置かれているのが見て取れます。この囲形埴輪、土製品が纏向遺跡などにある祭祀場に浄水を引く木槽樋(もくそうひ)に似ていることから浄水祭祀場と考えられています。(『広報ふじいでら』第349号より)

 ところが、真逆とも言える新説が!

 浄水施設と考えられていた木槽樋に続く溝の土壌に、寄生虫卵が大量にあったことからこの施設は厠で、集落から離れた所にあることから水洗トイレ付産屋(うぶや)ではないかというのです。となると、囲形埴輪は古墳の被葬者、もしくは次の王の誕生シーンを表現している埴輪ということになるでしょう。(『広報ふじいでら』第361号より)

 最近国宝になった、松阪市の宝塚1号墳の埴輪にも囲形埴輪があります。正方形に近い形で、1個の囲形埴輪の中に家形埴輪を置き、家の中には土製の木槽樋があるものと、井戸があるものの2種類あります。

井戸のある建物も水祭祀の場と考えられています。浄水を得るのに、井戸と木槽樋の2つを利用したのでしょうか? 調べてみると、井戸とされているものも゙水が出ていたわけではなく、祭祀具を入れた土坑との見解がありました。(NPO法人 守山弥生遺跡研究会『導水施設と水辺の祭祀』より)

 祭祀は何を祈ったのでしょうか。

 豊穣などクニの皆のためと、王権の維持など首長層のためとでは祭祀に違いがあったと思われます。囲の中で行われたのは秘められた祭祀でしょう。

 鉛筆立てに適した埴輪を探していたら、古代の祭祀を学ぶ機会を得ました。

 全国には不思議な形の埴輪がたくさんあります。探してみると楽しいですよ。

 

           (もずうり)