勾玉を仕入れている和歌山の石材屋さんを訪問

名阪国道、京奈和道経由で和歌山市の紀の川河口にある石材屋さんを訪問。勾玉や管玉を仕入れている所で、原石を見てみたいと工場見学をお願いしました。

 

紀の川河口付近には、特別史跡の岩橋千塚(いわせせんづか)古墳群、金製勾玉が出土した車駕之古址(しゃかのこし)古墳、馬冑が出土した大谷古墳があります。

また、ヤマト王権の官営玉つくり工房〝曽我遺跡〟では、和歌山から運んだ滑石で祭祀用の製品を大量に作っていました。そして、加工に使用する石鋸(いしのこ)は和歌山県や徳島県で採れる紅簾片岩(こうれんがん)でできています。

 

町工場を訪れると、いつも電話応対してくれるお母さんと社長の息子さんが出て案内してくれました。

工場に入ると、木箱などがうず高く積まれ、目の前にゴロンと大きな原石がありました。

中国から届けられた原石の大きさは、この塊の4個分くらいで、これを注文に応じた大きさに機械で切断します。断面を見て切る方向性が分かると、層になった面を教えてくれました。

 

石の色について質問すると、黒は鉄や落ち葉が作用していて、ときには葉っぱの形をしているの物も見られるとのことでした。(ピンクに関しては忘れたそうです。)

 

産地は、白は中国桂林、ピンクは中国遼寧省スイセンという所だとお母さんが教えてくれました。社長のお話しでは「パキスタンの物も検討しましたが、色は白くて良いものの、硬い珪石が多く含まれているので、歩合が悪くてやめました」「採掘で発破をする所は大きな塊が採れないので、仕入れ先が限られる」とのことです。

不純物には、珪石(石英)や鉄の結晶があります。「こういう所を出来るだけ外すようにしていますが、稀に小さいものは入ってしまいます。」と社長は話されました。「体験では『子持ち勾玉だね』と言うと、子どもは喜ぶんですよ」と伝えました。

 

滑石(タルク)は生活に欠かせない物です。粉末にした物を、プラスチックやゴムは耐熱性を高める為に、塗料は粘性や艶を高める為に混ぜます。ファンデーションにも入っています。

工場では、製品にならない部分や切断時の粉塵を回収して、粉にする加工場に回すそうです。

 

品質については、外部の検査機関に依頼し、安全性を確認しているとの事です。名古屋市教育委員会の紹介ですが、安心して体験に使えると理解しました。

 

先代が当初から扱っている〝石筆〟を見せてもらいました。

滑石は熱に強く、水で洗い落とせることから工事現場などの鉄板に文字や印を書くのに使用しています。

薄くて長方形の物はカッターナイフのようなケースに入れて使用するそうです。

様々な事を教わり、50分ほど長居してしまいました。工場を出ると和歌山城が見えます。お母さんは和歌山城を〝吉宗さん〟と呼んでいました。

帰りに平井歴史資料室に寄りました。古墳時代の塩作りのむら、西庄遺跡のパンフレットに当時の海岸線を示した地図が載っていました。紀の川は河口が今より南にあり、大きく蛇行しています。和歌山城は砂州の上に立っています。砂州では地盤が軟弱そうで、城が傾きそうに思えますが、吉宗さんはこの先も和歌山の人たちに守られて在り続けていくのでしょう。